エストニアのマネーロンダリング情報局のレポート によると、2019年に667件の仮想通貨交換業者がエストニアでライセンスを取得したという。しかし最近、地方自治体から今後の法改正に関する発表があった。
現在の状況でエストニアでの仮想通貨ライセンスの取得が魅力的かどうかについて、KYCおよびGetIDの本人確認のソフトウェアを開発しているエストニア企業のCEOであるドミトリー・ラウッシュ氏がForkLogのインタビューに回答した。
ICOブームからスキャンダルへ
ICOを巡るハイプが始まり、ビットコイン価格が急騰した2017年、エストニアでの仮想通貨ビジネスの法的規制が採択された。
エストニアは、EUのマネーロンダリング防止令を国内法に導入した初めての国だった。それは仮想通貨ビジネスにとって法的に規制を整備するための基盤となった。エストニアでの登録がスタートアップの間で非常に人気となっていたのはそのためである。過去3年間で1,000件を超えるライセンスが発行されている。
しかし少し前にエストニアの財務省は新しいルールの導入について明らかにした。それはデンマークの大手銀行Danske Bankのエストニア支店で従業員が2,200億ドルをロンダリングしたスキャンダルの後に起こった。それを機に仮想通貨企業500社のライセンスが取り消された 。
新しい法律を巡る議論には、コミュニティと政府機関が参加したという。法律変更を発表したにも関わらず、エストニアは相変わらずデジタル資産の規制が明確に規定されている数少ない国の1つであり、ライセンス申請の流れは増加する一方だそうだ。
エストニアに物理的なオフィスと従業員を置かなければならない
2020年7月1日より、エストニアでは以下の法律改正が施行される。
- 今まで提供されていた仮想通貨ウォレットサービスと仮想通貨交換サービスのための2種のライセンスは、仮想通貨サービスプロバイダーという1つのライセンスに置き換えられる。
- ライセンスに関連するドキュメントを、公証人または電子企業登記を通じて提供する必要がある。
- 申請の決定期限は最長120日まで延長可能となった(これまでの最長期間は60日)。国家からのライセンス料は10倍になり、最大3300ユーロになる(以前は345ユーロ)。
- 政府は、エストニアのライセンスを取得したい仮想通貨プロジェクトのトップマネージャーと創業者について慎重に精査をする。彼らは教育、関連する経験、犯罪歴がないことを確認する証明書とその他の文書、全一式を提供する必要がある。
- 仮想通貨を使用したサービスを提供する法人は、エストニアに所在し、稼働している必要がある。
- バーチャルオフィスおよび住所の名目登録だけでは認められず、従業員が物理的にエストニアにいる必要がある。
- 各仮想通貨関連ビジネスは、金融サービスと見なされる。エストニアのマネーロンダリングに関する法律はすべて、仮想通貨プロジェクトにも適用されるようになる。
- スタートアップは、エストニアまたはヨーロッパ経済圏の別の国にある信用機関、電子金融機関、または金融機関の口座を持っている必要がある。
- 新しい規制に基づく最低認可資本金は12,000ユーロであり、法定通貨の形が望ましい。
- ライセンスの申し込みをすでに提出している企業は、エストニア財務省を通じ、申請が新規制に準拠していることを確認する必要がある。
- 仮想通貨スタートアップに対するKYCルールは、金融機関と同様に厳格になる。
1か月あたり仮想通貨受送金額が15,000ユーロを超える個人、および暗号通貨での1か月のトランザクションが25,000ユーロを超える法人は特に注意を払わなければいけない。突然に資金の出所を証明する書類が求められる可能性があるという。場合によって、そのような会社は「強力なデューデリジェンス」(Enhanced Due Diligence、EDD)を受ける必要がある。新しい法律に準拠するために、自社のユーザーが誰か、彼らがどのような取引をしているのかを知る必要がある。
KYC要件の詳細についてはこちら(英文)
ソース: