11月1日(水)
forklog(ロシア)
https://forklog.com/masterchejn-hroniki-razrabotki-gosudarstvennogo-blokchejna-rossii/
ロシア中央銀行は、イーサリアムプラットフォームを活用したMasterchainという独自のブロックチェーンプラットフォームの開発を2016年9月に発表していた。
ロシア規制当局の当初の計画によると、このプロジェクトは銀行が顧客との取引に関するデータを迅速に承認し、単一の電子システムでさまざまな金融サービスを開発できるようにするものであった。つまりロシアの金融業界のニーズに対応した国家ブロックチェーンが開発されるというものだ。
Masterchain
プラットフォーム開発コンソーシアム「FinTech」には、当初中央銀行に加え、ズベルバンク、アトクレチア、アルファバンク、ティンコフとキウィが含まれていた。またVTB、ガスプロムバンク、NSTK(国営カードシステム)、アクバルス銀行が参加していた。
2016年10月にMaterchainのプロトタイプがテストされ、中央銀行はそのプロトタイプのことを"新世代の金融インフラの不可欠な要素"と名付けた。その後、別の2つのプラットフォームのプロトタイプがテストされ、ソフトウェアパッケージ開発のための入札が発表された。
2017年3月にはすでに”FinTech”がMasterchainという商標登録に関する文書を提出している。プラットフォーム上では、いくつかの銀行による「本人確認情報(KYC)の交換」というパイロットプロジェクトが行われたようだ。その試みは"金融機関同士の画期的なやり取り"だと言われている。同3月末、"FinTech"はMasterchainの本格的な立ち上げが2018年に行われると発表した。
"FinTech"の代表者は、不正な取引管理統合サービス、委任状のやり取り、ファクタリング、高速取引処理などが含まれるブロックチェーンベースのメッセンジャーシステムについてのパイロットプロジェクトの開発も発表した。
同6月には、2017年秋から年末にかけたサービスローンチに向けたMasterchain環境の利用可能性について明らかになり、8月にはセキュリティシステム関係のいくつかのプロジェクトの追加発表も行われた。この時点では、"FinTech"と中央銀行の間でのMasterchainに対するコントロール範囲が定義されていない状態であった。。
8月14日、"FinTech"はMasterchainのホワイトペーパーを公開。その中でプラットフォームは「ロシア独自金融情報の交換や保存ネットワーク」として定義されている。ホワイトペーパーによると、プラットフォームとしてのブロックチェーンは、個人情報やビジネス機密情報などを含むデータを格納せず、媒介を必要とせず、スマートコントラクトの対応が可能であるという。さらに開発者はMasterchain内で行われるすべての動作は法的に有効である、と付け加えられている。
同9月、"Fintech"は新しいコンソーシアムメンバーとしてプロムスヴィヤズバンク、ソフコムバンク、MTS、モスクワ証券取引所の子会社MBイノベーション、ロステレコム、ヴニィエシュエコノムバンクを受け入れた。
ヴニィエシュバンクの代表は「協業はブロックチェーン産業の国会規制システムの開発に積極的に貢献できるだろう」と述べた。つまりプロジェクトの参加者は、あらためてMasterchainが新しい技術が国家に活用されるためのプロジェクトであると強調したのだ。
その1カ月後、"Fintech"のセルゲイ・ソロニン総裁はプーチン大統領と会談した。その場でソロニン総裁は暗号通貨のマイニングと流通を合法化するようプーチンに訴え、必要な規制の整備について"Fintech"は出来る限り協力する、と約束した。一方中央銀行はMasterchainが規模を拡大するにつれて、ロシア市場で暗号通貨を流通させるべきではない、というような脅威的な発言をするようになった。
現在マスターチェーンはどうなっているか
"Fintech"のホームページには、プロジェクトは現在申請中で、2019年の大規模商業利用の準備が進められているという記載がある。
VTB銀行オルガ・デルグノワ副会長によると、暗号通貨に対する法規制の不透明さやブロックチェーンに基づくソリューションの利用を規定する法的枠組みが存在しないことがMasterchainプラットフォームの更なる発展のための大きな妨げになっているという。
「技術としてのブロックチェーンは規制に該当しない。合法性の概念は、ブロックチェーンを活用して作られたソリューションにのみ適用される。そのようなソリューションが法的承認を得ることは、いくつかの理由によって難しい。まず第一に、デジタル通貨のような具体的なプロダクトに対する適切な法規制が無いこと、二つ目はやり取りは必ず紙ベースで行なわなければならない、という要求である。したがって既存の法規制に違反する結果は様々であろう」とデルグノワ副会長は付け加えた。
"Fintech"の分散レジストリ技術開発ワーキンググループ長アクレクセイ・アルヒポフが協調したように、もう一つ解決に時間がかかりそうな課題は"国家暗号学の認証"が必要であることだ。
「私たちの見積もりによると、Materchaneは2019年の初めまでに完全に出来上がる。並行してMasterchainの中で参加者の事例を使ったポテンシャル把握と既存の技術的ソリューションのトライアル運用を行う予定だ。さらに、暗号技術の証明に多くの時間を要するだろう」と”Fintech”代表は述べた。
国家ブロックチェーンへの批判
金融市場向けの分散レジストリ技術に基づくソリューションに対する明らかな需要があるにもかかわらず、暗号通貨コミュニティではまだまだ国家からサポートされるブロックチェーンプラットフォーム開発の見通しが疑問視されている。
特に経験豊富なアナリストでありICOコンサルタントのトン・ワイス氏は、国家システムにとってイーサリアムに基づいたブロックチェーン導入は必要ないと考えている。
ロシアは国家としてイーサリアムの技術が必要か?
ー国家としては必要ないでしょう。分散型スマートコントラクトに関してコーディング、データ保存の面でコストが非常に高い。
さらにワイス氏は、国家の中央的かつ独裁的な本質は、分散型であるブロックチェーンとそれに基づいたソリューションの本質と明らかに矛盾していると考える。「Bitcoinの発明者であるナカモトサトシは、銀行のコントロールを超えた取引を思いついた」とワイス氏は付け加える。
ロシア連邦におけるブロックチェーンと暗号通貨の法規制が進展しているにもかかわらず、Masterchainプラットフォームの未来は明るいとは言えない。
当初プラットフォームは2018年に本格的にローンチする予定でいたが、後にそれは1年延期された。それはロシアの立法者がブロックチェーン技術が金融市場やその他の分野のために提供してくれる可能性についてあまり理解していないことが影響しているだろう。
このように官僚による法規制の欠如やロシア当局の暗号通貨に対する全体的にネガティブな姿勢が、Masterchainプラットフォーム開発だけでなくロシア経済の様々な分野への分散型レジストリ技術の導入の障壁になっている。